選択的夫婦別氏制度とベトナム式談合
日本のヤフーニュースを読むと「選択的夫婦別氏制度」が話題になっていた。ベトナムではもちろん、認めるも何も夫婦別姓であり結婚したからと言って相手方の姓(氏)を名乗ることは許されない。正確に表現すると男系でのみ継承されるのが姓(氏)であります。稀に、男系女系両方の姓(氏)を受け継ぐ子供もおりますが原則父方の姓を名乗ります。判りやすい表現をすると、母方の姓(氏)は消滅します。
さらに、厳密な話になりますが父と子は同一の姓(氏)の人間でありますが母は他所から入ってきたお客様的な立場でありますので、父と子と同じ権利も与えられません。母だけは少し厳しくなりますが食卓を一緒にすることも許されませんでした。母は食卓で食べることが許されず、台所でこっそり隠れて食事をする風習がありました。もしかすると、今もこの文化が残っている地方があるかもしれません。
もう少し受け加えておきますが、母は父と同じ墓に眠ることも許されませんでした。理由はもちろん、姓(氏)が異なるからです。
ベトナムの視点から日本の既存の制度を見ると素晴らしさを感じられます。
結婚したら相手方の姓(氏)を名乗ることが許されるのですから。そして、家族の一員になれる。
姓(氏)は家族が大切に守り抜いてきた歴史や伝統がその中に存在します。
この姓(氏)を婚姻を条件に名乗ることを許す制度がある日本も素晴らしいことですが、現代はそれさえ鬱陶しくなったのでしょう。
次に話はビジネスの方に移行します。
ベトナムでは夫婦別姓であり、かつ姓が少ないことで名前だけ聞いても家族なのか親族なのか判別できません。
これを上手く利用した商習慣があります。
上場企業だれば、有価証券報告書の中に関係会社(利害関係)に関する記載義務があります。簡単に申しますと、関係会社間の役員が同一人物であるかまたは同一人物が一定の決裁権を保有しているかを開示する必要があります。
日本の場合ですが、親族で同じ姓を名乗っている場合が殆どですので有価証券報告書や役員名簿を見れば「もしかして親族経営の会社?」「この会社とこの会社の役員さんの姓一緒だから、親族?」と気付くことが多くあります。
ベトナムではこれが判らない。姓だけでは全く判らない。
登記簿を調べてもA社とB社の関係性が判らない。
ここで談合がし易くなります。
☆簡単!だれでもできる談合講座☆
まず、下記3社が道路工事の入札に参加します。もちろん、3社は談合しております。
A社 社長 Nguyen Duc Khai氏
B社 社長Do Thi Nga氏
C社 社長Nguyen Thi Mai氏
実はこの3社はA社社長のNguyen Duc Khai氏の父が出資した会社であり、社長3名とも兄弟または親族である。
どの会社が採用されても、同じ親族グループとなる訳です。
この構図はベトナム経済界の全てを動かしていると言っても過言ではないでしょう。
夫婦別姓のベトナムでは入札書類審査では参加企業が親族や資本関係がある会社かどうかが判りません。これは簡単なお話ですが、闇は深いかもしれません。